くすみ書房
本屋のオヤジの3日ぼうず

本屋のオヤジが3日に1冊本を読んで感想を述べていくという修行のような企画です。
やる、やると言って何年もできなかったのですが、ついにスタートです。
さあ、何日続くか!?


6/1 さあ、1冊目。
  「かたみ歌」
朱川 湊人 新潮文庫 460円

記念すべき1冊目は心にしみるおすすめの本です。これはいいよお。不思議なことが起きる東京の下町、アカシア商店街。 7つの少し怖くて優しい不思議な物語。それが最後に"どん"と継ながって、あっ涙が…。
「アカシアの雨がやむとき」が流れる昭和のどこにでもありそうな商店街。懐かしいなあ。
 


6/4 続いて2冊目。
  「いっぺんさん」
朱川 湊人 文春文庫 710円

いやあ、朱川 湊人はいいなあ。この本も短篇集。1作目が表題の「いっぺんさん」。先に言っちゃうと、この1作だけでこの本を買う価値あり!と言えるほどいいよお。”どんなお願いでも、一回だけなら絶対に叶えてくれる”という神様にお願いに行った小学4年生のふたりの少年。ほらこれだけで引きずりこまれるでしょ。友だちのしーちゃんの願いは早く大人になって白バイのお巡りさんになること。暴力ばかりふるう父親から母ちゃんや弟たちを守ってやりたいからだという。でもしーちゃんはその後すぐ頭の中にデキモノができて亡くなってしまった。僕の願いは決まった。”もう一度しーちゃんに会わせてください”そうお願いしたのだが…。
 

6/7 それ3冊目。
  「しゃぼん玉」
乃南アサ 新潮文庫 540円

震災後のこの時期だろうか、ここのところ、ただ”おもしろい”だけでは少しもの足りない。読後感が悪かったり、希望のない本はどうも…。その点この本はいいぞ!
やる気がまったくなく、ひったくりを繰り返している若者が九州の山深い村で老婆を助ける。なんとなくその老婆と暮らし始め、 村人たちと触れあっていくうちに少しずつ自分が変わっていくのを感じていく。
乃南アサといえば、サスペンスのイメージが強かったけど、こんな本も書いているんだ。平成20年2月に文庫化しているのにまだ初版。知られざる傑作だ。
 

6/10 やった!4冊目。
  「阿弥陀堂だより」
南木 佳士 文春文庫 530円

1995年発売、2002年文庫化の名作。南木佳士は「ダイアモンドダスト」で芥川賞受賞の実はお医者さん。
2002年当店1番のおすすめ文庫。久し振りに再読したけどやっぱりいいなあ。医者である妻の心の病を機に故郷の信州に戻った作家の孝夫。作家といってもほとんど書けない。山里の村には
村人の霊を祀る阿弥陀堂が。二人はそこで堂守りとして数十年も一人で暮らす97歳になるおうめ婆さんと出会う。静かなときの流れと豊かな自然の中で妻はゆっくりと回復していく。やがて孝夫も書かなくてはという強迫から解放されそうな気がしてきた。川から吹く風に淡く土の匂いがして、たしかな春の訪れを告げていた。ねっ、いいでしょ。
 


くすみ書房